中朝関係がこれまで以上に悪化していく兆しを見せている。

この1ヶ月以内に、北朝鮮による中国船籍の密輸船攻撃事件(北朝鮮領海内)と、中朝国境での北朝鮮による中国民間人殺害事件(中朝国境付近)だ。

いずれも、密輸を行っていたので、密輸者にも非はあるが、友好国に対する北朝鮮の硬直的な対応には驚く。

これまで、中国は北朝鮮に対して、幾度となく食糧援助や資金援助を行ってきた。

というのも、両国の成立間もない朝鮮戦争で中国が北朝鮮を支援して以来、両国の関係は「兄と弟」と例えられるほど、親密になった。

※朝鮮戦争停戦後は、フルシチョフの修正社会主義以降、中国はソ連との戦争に備え、北朝鮮をより重視してきた経緯があり、大慶油田で取れた原油を北朝鮮に無償援助するなどし、物理的にも北朝鮮を支援してきた。

良好な「兄と弟」の関係が今日まで続いていたのである。

私的な考えでは、中国から見れば、昔から朝鮮半島にあった国々は、中国の王朝への朝貢国であり、支援するのは当然であるとも推測できるので一方的な援助を行ったとも考えられる。

また、金日成・金正日の個人崇拝も認め、主体(チェチェ)思想にも理解を示し、上海万博への出展も援助した。

改革開放以降も、良好なる「兄と弟」の関係は続き、メリットのない北朝鮮支援は、これまでの経緯だけで維持された。

中国は破格の待遇を北朝鮮に対して行ってきたのだ。

しかし、ここにきて北朝鮮海軍の韓国海軍への攻撃で中国が韓国側を支持しているそぶりを見せ始め、時代錯誤で封建的な北朝鮮を見限り始め、韓国との実益を重視し始めた。

従来の関係が過去のものとなったことを認識しつつある北朝鮮は、中国を攻撃してしまった。

これは、明らかな愚挙である。

援助してくれている国を攻撃し、恩を仇で返す信じられない国である。

中国からすれば、密貿易を行っていたとはいえ、自国民の攻撃は自国の面子をつぶされたことになり、初めて、正式抗議を行うことになった。

金正日から3男正男への権力移譲が報道される状況で、中国までもが敵に回れば、北朝鮮が立ち行かなくなるのは目に見えている。

日米韓は、北朝鮮に対して強い態度で臨むが、このままでは中国も間接的に包囲網に加わる可能性がでてきた。

直接、日米韓の包囲網に加わることはないものの、これまで行ってきた援助を止め、北朝鮮を兵糧攻めにする可能性もある。

北朝鮮に対して改革開放しない限りは、自国との通商を認めない態度をとるかもしれない。

これこそが、日米韓の望んでいる中国の対応だが、中国側の思惑もある。

韓国が北朝鮮を併合することを望まないのは、中国を始め各国共通の考えなので、北朝鮮を中国式の資本主義型社会にさせることが最善であると考えるだろう。

朝鮮半島を韓国が統一すれば、在韓米軍の問題もでてくるし、東北部(旧満州)にいる朝鮮系中国人の動静も気になる。

東アジアで韓国が大きくなりすぎることは、中国にとってもよいとは限らない。

また、大乱を起こさせては、北朝鮮の軍事技術や各技術が自国の不利な組織にわたる可能性もあるので、ある程度管理された状態であることが望ましい。

いろいろなことを中国は考えているが、中国国内では北朝鮮問題は核を除けば、次第に関心が薄れていく可能性もある。

これまで北朝鮮に対して歴史的な関係があった人々やその経緯を知る人々が、中国共産党の指導部にいたが、経年化でその人々も減り始め、いまや経済重視の人が幅を利かせるようになっている。

2012年の世代交代で、第6世代誕生すれば、それは一層強くなるだろう。

北朝鮮もそのことを熟慮しているが、先細る自国の国力では何もできない。

亡国になった北朝鮮の次の暴挙・愚挙が心配です。