トルコのEU加盟交渉が中断したらしい。
理由は、キプロス問題と船舶の入港を巡っての交渉がかみ合わなかったかららしい。

トルコのEU加盟には、様々な利権、政治的な問題がぶつかる。

・キプロス問題
・海峡問題
・クルド問題
・移民問題

以上のような、問題があり、容易に進まない。
以下に、それらの問題の詳細を記す。


キプロス問題は、東地中海に浮かぶキプロス島は南北に分断されており、南はギリシャ系で、EU加盟をしているが、北はトルコ系のためトルコの勢力下に組み込まれており、島の中心に南北を分断する壁が1983年以降から存在する。北は、トルコのみが承認する国であり、トルコからしか北キプロスにはいけない。
南は、ギリシャ系に対し北はトルコ系住民が多く、両国が分断するときに、民族によって居住区がわかれたようだ。
北キプロスの帰属を巡って、トルコとEUの主張が食い違っているようだ。
もともと、キプロスは東地中海の要所で、ヒッタイトやエジプトの統治に始まり、ローマ軍が紀元前から統治し、大航海時代にはジェノバとベネチアが島の帰属を巡って争い、以降はオスマントルコとイギリスが争い、最終的にイギリスが統治していたが、その後独立運動が起こり1960年に独立した。
今は、船舶や航空機などの輸送機関の発達によってキプロスは中継機能としての役割は薄れているが、アメリカや欧州から見たときにキプロスは中東(とりわけイスラエルとその周辺国)と欧州をつなぐ地点にあり、中継機能としての重要性は失っていないようだ。
トルコとしては、北キプロスを失えば、東地中海への影響があり、ギリシャ系の南キプロスがキプロス全島に展開すればトルコとギリシャが争ってきた経緯からすれば、トルコとしてはプライドが許さない。
そのため、トルコは南北キプロスの統合がEU加盟交渉の課題となったときに、トルコは南北を共和制にすることや、ギリシャ系南キプロス人が北キプロスへの戻るのを制限し、統合後も7年間はトルコ軍が北キプロスに駐留するのを認めることを条件に統合させようとしたが、トルコの影響が残るのを懸念した南キプロスによって反対され、南北の統合は中断している。
EUとしては、キプロスを統一できればイスラム色の影響を受けない中東への中継地点となり、地中海の安全保障を確立する点において、非常に重要であり、EU、トルコにとってキプロスの帰属は利権がからむ複雑な問題となっている。

トルコの商業都市であるイスタンブール付近には、世界的にも有名なダータネルス、ポツホラス海峡があり、この両海峡をめぐって英露仏土が争ってきた。
この海峡は、現在世界的なエネルギー需要の増大から、カスピ海でとれる石油を黒海までパイプラインで運んできて、そのからダータネルス、ポツホラス海峡を経て地中海へ運ばれるので、非産油国にとっては非常に大切な海峡のひとつであり、トルコをEUに加えればこの海峡がEU勢力圏になり、安定した原油の確保が望める。
そのため、トルコをEUに取り込めば両海峡はEUの共有財産と認識するわけだが、海峡を通過する船舶から得る通行料などはトルコ政府にとっても重要な財政源であって、トルコはEUの共有財産であるが故に通行料の値下げを遠く離れたブリュッセルで決められるのは不本意である。
 また、EUとトルコ以外の国からしてもEUが地中海の3つの出口(スエズ運河・ダータネルス、ポツホラス海峡・ジブラルタル海峡)のうち2つを握ることは好ましくない。
アメリカも、地中海に展開する艦隊が今後のEU統合がどこまでいくかによって、トルコのEU加盟は海峡問題からしても好ましい問題ではない。

 クルド問題は、トルコがEU未加盟であればEUは人権問題、民族弾圧などの人道上の問題では関係あるが、EUにトルコが加入するとクルド人対するトルコの扱い方がEUの基準で縛られるため、人権を重視するEUからするとイスラム的価値観のトルコがクルド人弾圧をするトルコを見過ごすわけには行かない。

 上記の問題よりも最も重要なのが、EUにとってトルコ人の出稼ぎ問題である。
EUに加盟すれば、労働者が働く国を基本的に選択できるようにある。人とモノの往来を自由するシェンゲン条約は、非常に厳しいハードルがあるので条約調印は難しいが、トルコ人がイギリスやフランス、ドイツへの出稼ぎにでかける条件は以前よりは緩やかになる。
 トルコ人は、EU域内の人材よりも安価な賃金で働けるので企業側からすれば魅力ではある。
 条件緩和によって、トルコ人がEU加盟国へ出稼ぎに行き、EU加盟国内の雇用環境をさらに悪化さえることはEUにとって好ましくない。
 さらに、近年フランスとイギリスを中心におきている移民及び移民の子孫による暴動やテロがトルコ人の出稼ぎを警戒させている。移民及び移民の子孫もイスラム系が多く、ロンドンのテロの容疑者達はパキスタンから移民だった。フランスで起きた暴動は、アフリカ系の移民の子孫たちが社会待遇の不平から起こしたものだが、移民や出稼ぎ労働者は、安価な労働力を目当てに政府も労働を認めるのがその子孫となればもはやその国の国民と言う意識がある。
 その意識が扱いの不遇から暴動やテロを起こしている。
 フランスやイギリスはとりわけ、イスラム系移民には細心の注意を払っているようで、同じイスラム圏のトルコからの労働者には慎重にならざるをえないのが実情だ。

 このように、トルコのEU加盟は様々な利権と事情が複雑が絡み合っており、容易に進まない。
 おそらく、トルコのEU加盟は10年先延ばしになると思う。トルコの産業構造は軽工業と農業主体であり、トルコがEUに加盟しても貿易摩擦は起こるだろうし、トルコもEU製品の流入によって自国の産業が衰退するのは望ましくない。なので、トルコの経済がもう少し成長してからEUに加盟しないと不均等貿易になる。さらに、現在はイスラムに対する嫌悪感が先進国にあり、この嫌悪感がなくならない限りEUに加盟してもトルコには政治的にもプラスにならない。
 EUはトルコに対して、EU加盟を前提とした交渉を経て経済成長を促し中東との架け橋を担わせるつもりなのかもしれにない。