日経平均株価は、辛うじて1万円割れをせずに頑張っているが、このまま1万円割れせずに、再び上昇できるのだろうか?

 答えは、Noだと思う。
 一度は、1万円割れするのは確実で、期間の長い調整を年後半にかけて行われる可能性が高いと考えている。
 期間の長い調整に入るとすれば、いくつかの条件が重なったときであると考えるが、その条件を以下に書き出してみる。

1、欧州のソブリンリスクによる不透明感
2、新興国の金融引締め策
3、先進国の景気刺激策の継続の有無
4、欧米の商用不動産施設のデフォルト増大懸念
5、個人消費の貧弱な回復力
6、住宅指標の伸び悩み

 1のソブリンリスクは、日本でもお馴染みとなったPIIGS諸国の問題があるが、とりわけ深刻なのがギリシャだ。
 ギリシャは、通貨ユーロを採用しているため、通貨政策がギリシャ単体で決められないため、通貨の切り下げも行えず、限られた政策の中でもがくのが精一杯だ。
 もがいているだけで、具体的な解決策を打ち出せない現状を外野から見ていると、不透明感が募るだけで、今後も続くようなので、さらなるユーロの不安定要因となり、株式市場にとっては悩みのためとなる。
 ギリシャの問題が、PIIGSに飛び火して深刻化するリスクもあるので、欧州のソブリンリスクの問題は通貨ユーロの動向にも注目しながらみていく必要がある。

 2の新興国の金融引締め策では、中国が春節前に行った引締め策についで、インド、ブラジルでも行われた。
 これにより、新興国でのプチバブルを抑制し、正常な方向に持っていこうとしているが、この動きは正しいと考える。しかし、これら引締め策が、新興国で立ち直りかけた先進国経済に対してはマイナス材料となる可能性が高い。
 よって、今後の程度にもよるがさらなる引締め策が行われるのであれば、日本の輸出業者にとってはマイナス要因となり、株価を下げる要因となるだろう。

 3の先進国の景気刺激策の継続の有無は、この3月で先進国が昨年の春頃から行った一連の景気刺激策が終了する。
 これまで、ハイテク株や自動車株を引っ張ってきた要因は、各国が打ち出した補助金によるものが大きいが、補助金よる買い替え促進で需要が一巡してしまい、補助金に頼らない純粋な需要が生まれてこなければ、再び景気刺激策を実行しなくてはならない事態に陥る可能性がある。
 このときに、先進国は景気刺激策を継続できるだろうか?そのための原資は、どこでもってくるのだろうか?その2点に注目したい。

 4の商用施設のデフォルト増大懸念は、金融危機以前の経済水準に戻るのはまだ先のこのだが、この水準に合わせて欧米では商用施設が次々と誕生している。
 商用施設は、通常スクラップビルド戦略により、古い施設を取り壊して、よりよい条件の場所に新しい施設を建てることが多いが、新しい施設が割高な条件で借り、需要に対して大規模な施設であった場合、破産に陥る可能性があり、昨年秋以降、欧米では商用施設の閉鎖が増えつつある。
 今後も個人消費が、戻らない状況が継続するようだと、商用施設を運営する会社自体の倒産がさらに増大し、減り始めている不良債権を増やす結果となる可能性もある。

 5の個人消費の貧弱な回復は、アメリカの個人消費を現す統計指数などを見ているとわかるように、一進一退で、最悪期を脱したものの依然として後退の余地を残している。
 3であげた景気刺激策によって個人消費の底上げをはかっていたが、個人消費の回復力が弱いままで、回復に向かわないと3と4であげた問題と合わせて売り圧力の要因となる。

 6の住宅指標の伸び悩みは、ケースシラー指数に代表されるような住宅指標は、ここ最近は小幅な上昇か現状維持程度であり、不動産担保証券市場に明るい兆しを与えられていない。
 住宅指標が世界的に伸び悩むと、不動産担保証券を保有している欧米の金融機関が積極的な貸し出しに動きにくい。
 現在、欧米の金融機関の稼ぎ頭は、投資銀行業務であり、これらの業務で利益を上げないと商用部門をカバーできない。今後も、投資銀行業務が稼ぎ頭であることは変わらないと思う。
 
 以上の要因をあげたが、これらのネガティブ材料が3つ以上そろえば、株価は9,000円台前半になると考えている。

 以上。