今日のNIKKEI225は年初来の高値を更新して、終わりました。

 とうとうGMがチャプター11を申請し、ダウ平均構成銘柄からも外され、大規模なリストラが始まり、今後の行方に注目が集まりますが、アメリカ政府がどこまで関与するのかが最も気になります。

 さて、現在の株価は実態経済に対しては、かなり高めであるとされる一方で、今後の景気先行きを楽観視する動きもあり、妥当な値段であると考えている人が多いようです。

 しかし、今後は3つの懸念事項が株価を左右するのではないのかと考えています。

 1つ目は、原油価格をはじめとするコモディティー価格の上昇です。

 WTIの期近物の価格を見ていると、1バレルあたり70ドルを超え、昨年の11月と同じ水準まで戻りました。

 この背景には、北半球でドライブシーズンであるために、需要の拡大が見込めることがあげられますが、実態としては景気回復を見越して、投資ファンドが原油先物市場へ資金を流入していることが大きいようで、OPECの増産も見込めない状態では、いつまでこの上昇が続くのかと思います。

 原油価格をはじめとするコモディティー価格が上昇し、均衡点がかみ合わないようになると、インフレ圧力となり、立ち直り始めた景気に悪影響となりますので、今後の動向に注意する必要があります。

 コモディティーの中で、金の値段が1トロイオンスあたり950ドル前後でもみ合っているのも、気になります。

 安全資産としての債権が売られ、金は売られない。

 なぜでしょうか?

2つ目は、金利の上昇です。

 年初からアメリカ国債の利回りが下落を続け、債券価格が安全資産として買われ、上昇を続ける状態が1月頃まで続いていましたが、いつの間にか債権の利回りはアメリカ国債の10年物で、3.83%となり、バブルともてはやされたのはいつのことやら。

 長期金利が上昇すると、住宅ローンの金利も上がり、回復の兆しが見え始めた住宅市場に悪影響がでます。

 アメリカ政府が国債を大量に発行したために、債券価格が下落していることや、2010年1月のFOMCでは、FF金利の0%政策を脱し、0.25から0.5%前後に利上げするという観測に対してそれらを早期に織り込みすぎているという見方もあり、今後はどこまで債券価格が下落し、長期金利が上昇を続けるのかに注目が集まります。

 3つ目は、大規模景気刺激策の効果の持続性です。

 日本政府も補正を含めて、14兆円近い金額を拠出しました。
定額給付金の支給やエコポイントも、消費者には少なからぬ刺激となったでしょう。

 しかし、これらの効果がいつ頃出てきて、いつまで続き、その間に民間の消費行動が再び活発になって、経済再生の原動力へと直ぐに結びつくかどうかが疑問です。

 すなわち、今回の世界不況の原因は、アメリカの住宅市場に端を発した金融危機で、アメリカの住宅市場価格が下落をし続けては、世界最大の消費国であるアメリカに活力が戻らず、いくら内需が伸びているといっても、アメリカや先進国依存の強い中国などの新興国だけでは牽引役としては力不足で、アメリカ抜きでの再始動では時間がかかるでしょう。

 新規住宅着工件数や、中古住宅販売件数などを見ていると明るい兆しが見えつつありますが、ケース・シラー指数は依然として対前月比に対してマイナスです。

 マイナスが続くうちは、債権を保有している金融機関も抜本的な解決策を打ちにくいでしょうし、従来型の消費モデルの復活もありえません。

 また、今後も長期金利が上昇するならば、住宅ローンの金利へも悪影響で、住宅市場にマイナス要素となるでしょう。

 現状を考えると、2009年の後半までは新興国が世界消費を盛り上げ、経済の牽引役となるでしょうが、上記の1と2で述べた、原油をはじめとするコモディティー価格の上昇や、長期金利の上昇で、新興国の経済に冷や水を浴びせ、再び景気は低迷するというシナリオも無視できません。

 原油価格の上昇は、産油国にとってはプラスとなり、新たな資金の出してとなりますが、昨年の7月のように上昇が過度に行き過ぎると、インフレによって消費が落ち、再び景気が悪化するというパターンになる可能性もあります。

 長期金利の上昇は、資源を持たない国で、借り入れで賄っている国(東欧)にとってはマイナスです。

 NIKKEI225の1万円の上値トライは、しばらく相場のトレンドにあるでしょうが、秋口にかけては景気に対して先行き不安から、再び8,000円台までさがるというシナリオを想定しています。