日経平均もNYダウにつられる形で続落し、海外依存度の高い自動車やハイテク銘柄は3月17日の11,787円と同じ水準になってしまったものが多い。
 これまでの日経平均は3月17日以降から海外投資家を主力とする上昇だったため、アメリカが下落に転じたことで海外勢の日本株の売りが売りを呼び、13日連続続落になるなど、1965年以降には起こらなかった珍事に出くわし、改めて今回の金融危機の傷の深さを思い知らされた。
 私は、日経平均は持ちこたえると予想していたが、残念な結果となった。

 NYダウが続落している原因は、大手金融機関の相次ぐ増資でも繰り返し発生する金融不安、下げ止まらない住宅価格、原油をはじめとする商品先物市場の大幅な上昇によるインフレ警戒感から株式が売られ、債権、商品先物市場に資金がシフトし、一段の商品先物市場の上昇を招き、株安を起こすというサイクルが発生している、その中でもかなり原油は国際情勢に大きく影響されており、原油価格で株価が大きく左右される状況となっている。
 年初からの大幅な上昇の背景には、投機資金の流入もあるが、年初から原油価格を見ているとイランとイスラエルの動向で値段が決まるといっても過言ではない。

 昨日、イランがイスラエルの全土を射程圏内に治める中距離弾道ミサイルの試射を行った。今回は、ミサイルには爆弾などは搭載しておらずあくまでも空のまま打ち上げた試射だったが、イランが中距離弾道ミサイルに積み込める核爆弾を開発すれば、中東情勢が一気に緊迫することが予想される。
 
 なぜ、昨日試射を行ったかという点では、洞爺湖サミットで公式にイランの核問題について話し合うことに対してイランが牽制の意味も込めて試射を行ったようだという見方が強い。

 イランの核開発・核保有問題は中東で非常に大きな問題なっており、とりわけイランと対峙するイスラエルにとってはイランが核武装すれば、自国も公式に核武装する必要性に迫られ、自国の安全保障上の脅威となる。
 
 また、イランの核保有化によって中東でのイランの影響力が強化され、反米・反イスラエルを掲げる組織、ハマスやヒズボラなどの活動が活発となって、治安が悪化し、シナリオによっては中東戦争が再度勃発する可能性もある。

 しかし、イランにとっては中東戦争を起こすことが必ずしも自国のメリットになるわけではない。イランの核開発の最終目標は中東におけるイランの覇権国家への基礎を築くことであるが、短期的には石油価格の操作を狙っている面もあると考えられる。
 
 イランは、現在ある石油プラントの多くが経年化により産油量の減少が懸念され、新規油田開発もアメリカやEUの経済制裁によって難しい状況となっている。
 
 日本も、最近までイランとイラク国境付近にある、アザデガン油田の開発を目指していたが、緊迫する国際情勢やアメリカの圧力によって、開発を断念し、開発権をイランの石油公社に返上した。
 
 また、フランスのトタン社もイラン南部のガス田の開発をアザデガン油田と同様の理由で止めたと今日付けでイギリスのFTが報じている。
 
 このように、輸出型工業国ではないイランでは現在ある油田だけが唯一の収益源となっており、大規模な新規油田開発を行わない収益の確保の目処を立てない限り、先細る油田だけでは先行き不安であり、原油の値段が上がれば、自然と自国の収入も増える仕組みなので、自国を取り巻く国際情勢で、緊張状態を作り上げ、原油の値段に反映させているのではないだろうか?と考えられる。

 また、イランのアフマディネジャド大統領もイスラエルを侮辱し、アメリカに対し敵意を表すなどの行動は一連の動作を表しているのではないだろうか?と考えても納得いくし、隣国のイラクがアメリカと戦火を交え、政権が崩壊し国土が荒廃し、未だに混乱のさなかであることや、アメリカが背後におり、かつ中東最大の軍備を備えているイスラエルの戦力を考慮すると、冷戦は歓迎しても戦火を交えるホットワーはイランも避けたいのが実情だろう。

 対する、イスラエルであるが、イランの核兵器開発拠点を攻撃するのではないだろうかという情報が2月以降にたびたび目にするが、イスラエルにとってみると、中東でのイスラエルの真の盟友はアメリカしかおらず、有事の際は隣国のヨルダンとエジプト、サウジ、UAE、クウェートなどはアラブよりながらも中立を表明することが情勢によっては考えられるが、イラン、シリア、レバノン、などは反イスラエル色が強く、地理的に不利な状況は変わらない。

 また、イラクもシーア派とスンニ派の闘争が若干ではあるが、沈静化したものの背景にはマリキ首相がシーア派に対して寛大な態度を取ったためであり、両派閥の闘争が解決したわけではなく、イラク国内で今後イランの影響力が増せば、イラクも反イスラエル国家となる可能性もあり、イスラエルにとってはアメリカの大統領選で共和党と民主党のどちらが大統領になるかも重要であるが、一方でイラクのマリキ政権がシーア派とスンニ派をどのように統制するかも大変重要な問題だ。

 イスラエルにとっては、いずれにせよイランが核を保有すれば中東の軍事バランスが大きく塗り変わる恐れがあるので、早期にイランの各施設を爆撃してしまおうと考えるのは、イスラエルらしい発想であるが、現実にはイスラエルも爆撃を実行できないのが実情だ。

 その理由として、確実にイランが弾道ミサイルに搭載可能なレベルまでの核の濃縮作業を行っているという確証が得られていない点だ。イランのアフマディネジャド大統領はテレビ演説などでは遠心分離機を大量に設置し、大規模に濃縮作業を行っていると報じているが、実情とはかけ離れた誇大広告であると考えるのが主流であり、また濃縮技術についても弾道ミサイルに搭載できるサイズまで濃縮するのは難しいようで、核兵器ができたとしても兵器として現実的に使用できるかどうか疑問である。
 
 確証もないまま、あるいは成果が上げられない爆撃を行えば、アラブ諸国はもちろん世界中から非難を受けるし、原油価格が天井知らずに上昇し、原油価格を上昇させ、世界経済を混乱に導いた「ならずもの国家」としてイスラエルの国際社会における信用は失墜し、追う者から追われる者へと立場が一転する可能性もある。
 そこまでのリスクをイスラエルは背負ってまでイランの核施設を爆撃はしない。

 強気のイランと尻込みをするイスラエルだが、両国の問題が原油価格に多大なる影響を与え、世界経済に大きな影響を与える結果となっており、イランへの爆撃は世界経済にとってパンドラの箱となっている。
 しかし、このままイランの核問題を放置しても時間が解決してくれるわけではない。

 では、解決策はあるのだろうか?あるいは、この延々と続く関係は両国が共謀して作り上げた構図なのではないだろうか?と考えているのだが、今後の展望を原油価格、アメリカの大統領選の行方を交えて、引き続き書きます。